不登校の期間に、学校と同じペースで全教科を進めるのは不可能だと思います。
学校は1日6時間、教員が管理し、同級生という強制力がある環境でそれをやっているわけです。家で一人で同じことができるはずがありません。それを目標にすると失敗しますし、失敗すると「やっぱり自分はだめだ」という確認が一つ増えるだけになってしまいます。
ですので、最初に取捨選択をします。
結論:残すのは「算数・数学」と「読書」の2つ
学年を問わず、この2つだけは残してください。逆に言えば、他は一時的に捨てて構わないと思っています。
なぜ算数・数学なのか
積み上げ式の教科だからです。
分数が分からないまま比例に進むことはできませんし、比例が分からないまま二次関数に進むこともできません。抜けた場所を放置すると、戻るコストが時間とともに増え続けます。
理科や社会は単元ごとの独立性が比較的高いので、あとから個別に埋められます。数学だけは、それができません。
私は高2の冬に大学受験を決めたとき、参考書を開いて数学IAが一行も分からないことに気づきました。結局、中学3年の教科書ガイドを買い直して、二次関数の意味を弟に教わっています。
そこから3年かけて難関私立大学の理系学部に合格しましたので、取り返せることは取り返せます。ただし、取り返すのに3年かかりました。不登校の期間に少しでも触れていれば、その3年は短くできたはずだと思っています。
なぜ読書なのか
まとまった量の文章から情報を取る力が、すべての教科の土台になるからです。
短い投稿や動画で情報を得ることに慣れてしまうと、数千字の文章を読む体力が落ちます。この力がないと、教科書も参考書も、そもそも問題文すら読めなくなります。
そしてこれは全教科に影響します。数学の文章題が解けない原因が、数学ではなく読解にあることは非常に多いです。
内容は何でも構いません。小説でも、ゲームの攻略本でも、興味のあるジャンルの新書でも。まとまった活字を読み通す経験そのものが目的ですので。
ちなみに私は当時、ブックオフとゲオに入り浸って漫画を読み漁っていました。腕が筋肉痛になるまで立ち読みしていたので、活字を読む体力という意味ではゼロではなかったのかもしれません(笑)。
中学生以上なら、英語を追加する
中学生以上の場合は、これに英語が加わります。理由は現実的なものです。
- ほぼすべての大学入試で必要になります
- 積み上げ式なので、数学と同じく後から戻るコストが高い
- 高校卒業後の選択肢の幅に、直接影響します
不登校の期間に英語をゼロにしてしまうと、進学を考えたときに選択肢がかなり狭まります。単語だけでも触れておく価値はあると思います。
捨てていいもの
理科、社会、その他の教科は、必要になったときに取り返せます。
これは軽視ではなく、優先順位の話です。限られた気力と時間を、戻るコストが最も高い場所に配分するというだけのことです。
ただし、興味がある教科は例外です。歴史が好きなお子さんに歴史を止める必要はまったくありません。優先順位が低い教科は「やらなくていい」であって「やってはいけない」ではありませんので。
実際にどう進めるか
ステップ1:どこでつまずいたかを特定する
これがいちばん重要で、いちばん飛ばされてしまう作業だと思います。
不登校の子の学習で最大の問題は、遅れていること自体ではなく、どこから分からなくなったのかが誰にも分かっていないことです。
学年通りの内容から始めようとして挫折するケースを、支援の現場で何度も見ました。中学生が小学校の分数に戻る必要があるなら、戻ったほうが速いです。ここを飛ばすと、土台のないまま積み上げることになってしまいます。
ステップ2:さかのぼれる教材を用意する
ここで壁になるのが、心理的な負担です。
中学2年生に小学5年生の問題集を渡すのは、本人にとってかなりきついことだと思います。塾に行けば周りに同学年の子がいますし、家庭教師ならその人には見られます。
この点で、学年の枠がないオンライン教材は構造的に有利だと思います。小4から高3までの全単元が同じサービスの中にあり、どこを見ているかは誰にも分かりません。中学生が分数に戻ることも、高校生が中学英語に戻ることも、誰にも知られずにできます。
不登校の子の学習において、この「見られない」という条件は、教材の質と同じくらい重要だと思っています。
ステップ3:1日5分から始める
いきなり1時間やらせないでください。
映像授業を1本見る。問題を3問解く。それだけでいいので、「今日できた」という事実を作ることを優先してください。
不登校の子に不足しているのは学習時間ではなく、成功体験です。まずそこを埋めないと、量は増えないと思います。
ステップ4:やらなかった日に、触れない
やった日に褒めるのは構いませんが、やらなかった日には触れないでください。
褒めることと責めることはセットで作用しますので、「やったら褒められる」は「やらなかったら失望される」と同義になってしまいます。
もうひとつの「勉強」:本人の興味を広げること
ここまでは教科の話ですが、実はもう一つ重要なものがあると思っています。
私が不登校の1年間にやっていたのは、ゲーム、漫画、映画です。それだけです。ただ、1日中やっていれば1か月もしないうちに飽きるんですよね。あまりに暇でPCで絵を描いたり、ゲームを買うお金欲しさにHPを作って今でいうアフィリエイトを始めてみたりもしました。当時は完全な暇つぶしのつもりでした。
実際には、それがその後の人生でいちばん役に立っています。
不登校の期間が「空白」になるかどうかは、教科の勉強をしていたかどうかでは決まらないと思います。何かに能動的に触れていたかどうかで決まります。
- ゲームが好きなら、ゲームの作り方を調べてみる
- 動画が好きなら、編集をやってみる
- 絵が好きなら、描く道具を渡す
学校の教科より、こちらのほうが本人の将来に直結することがあります。少なくとも、取り上げるべきものではないと思います。
「いま勉強しないと手遅れ」ではありません
最後に、これを書いておきます。
私は中学3年をまるごと欠席し、通信簿はオール1、年間の出席日数は10日を切っていました。高2の冬に受験を決めたとき、模試は全科目偏差値30台、数学は0点です。そこから3年かけて難関私立大学に入りました。
もちろん時間はかかりました。2年遅れて社会に出ています。でも社会に出てしまえば誰も気にしません。就職の面接で浪人について突っ込まれたのは、一度だけでした。
必要になったとき、人は勉強します。 そのときに戻れる土台さえ残っていれば、間に合うと思います。
ですのでいま守るべきなのは、勉強の進度ではありません。算数・数学と読書という最低限の土台と、勉強に戻れる心理的な状態のほうです。
具体的な学び直しの順番は勉強の遅れを取り戻す順番にまとめました。