不登校の家庭学習でオンライン教材を検討するとき、必ず候補に挙がるのがスタディサプリだと思います。
先にお断りしておくと、私自身は受験生時代に塾と家庭教師を使いましたので、当時の私が使っていたわけではありません。ただ、大学在学中に不登校関連のNPOで働いたり家庭教師をしたりする中で、不登校の学習で何がボトルネックになるかは具体的に見てきました。その観点から、向く場合と向かない場合を書きます。
この記事には広告リンクを含みます。ただし、下に書いた「向かないケース」は本当に向かないと思っていますので、そちらも読んだうえでご判断ください。
不登校の学習で、本当のボトルネックはどこにあるか
まず前提の整理です。支援の現場で見た限り、詰まる場所は次の2つでした。
ボトルネック①:どこでつまずいたのか、誰も分かっていない
不登校で抜けているのは「今の学年」ではなく、「どこか過去の学年」です。そこを特定せずに学年通りの内容から始めると、必ず崩れます。
私自身、高2の冬に大学受験を決めたとき、参考書を開いて数学IAが一行も分からず、中学3年の教科書ガイドを買い直しました。二次関数の意味を弟に教わっています。高2が中学生の弟に数学を教わるのは、率直に言ってプライドが折れます(笑)。
それでも、ここを飛ばして高校範囲から始めていたら、絶対に間に合っていません。
ボトルネック②:さかのぼることが、心理的にきつい
中学2年生に小学5年生の問題集を渡すのは、本人にとってかなりきついことだと思います。
塾に行けば周りに同学年の子がいますし、家庭教師ならその人には見られます。表紙に「小学5年生」と書かれた問題集が家にあること自体が、負担になります。
どれだけ良い教材でも、開くのが恥ずかしければ開かれません。 ここが本質だと思っています。
スタディサプリが、この2点と噛み合う理由
① 小4〜高3の全単元が、同じ料金に含まれている
学年ごとに契約が分かれていません。小学4年生から高校3年生(大学受験)までの講座が、同じ一つのアカウントの中にあります。
つまり、中学生が小学校の分数に戻ることも、高校生が中学英語に戻ることも、追加料金なしでできます。 遅れの程度が分からない状態でも、とりあえず全範囲が手元にある状態から始められるわけです。
② 誰にも見られない
これが不登校の学習では非常に大きいと思います。
どの学年のどの単元を見ているか、誰にも分かりません。親にも、講師にも、同級生にも。「見られない」という条件が確保されていると、さかのぼるハードルが一気に下がります。
③ 1本が短い
授業は1本あたり15分前後(15分×2〜3本で1単元という構成が中心)で、途中で止められます。
体調やリズムに波がある時期に、「1時間の授業を最後まで座って受ける」のは現実的ではありません。5分だけ見る、という使い方ができる形式は、初期の再スタートに向いていると思います。
④ 費用が、他の選択肢より一桁安い
2026年9月時点で、ベーシックコースは月額2,178円(12か月一括払いなら月あたり1,815円)です。
| 手段 | 月あたりの費用 |
|---|---|
| スタディサプリ(ベーシック) | 約1,800〜2,200円 |
| オンライン家庭教師 | 1〜3万円 |
| 個別指導塾 | 2〜4万円 |
| 予備校 | 3〜6万円 |
通信制高校の学費に加えて塾代も、となると家計の負担は相当なものになります(通信制高校の学費は実際いくらか)。最初の一歩として費用を抑えられるのは、現実的な利点だと思います。
料金やコース構成は変更されることがあります(高校講座の「合格特訓コース」は2026年3月末で終了しています)。申し込み前に必ず公式サイトで最新の内容をご確認ください。
向かないケース:これ単体では続きません
ここが本題です。良いことばかり書いても役に立たないと思いますので、率直に書きます。
① 強制力がまったくない状態の子
スタディサプリは、誰も見ていません。
これは「見られない」という利点の裏返しです。やらなくても誰も何も言いません。そして不登校の子が家で勉強しないのは、やる気の問題ではなく、環境に強制力がないからだと思います。
私は大学受験の浪人2年目に自宅浪人をして、生活リズムが崩れ、1年を丸ごと失いました。18歳で、大学に行きたいという明確な意思を持った状態でさえ、自宅では自分を管理できなかったわけです。
3年目は予備校に通って合格しました。やったことは、「いつ、どこで、何をやるか」を自分で決めるのをやめて、外側のルールに従っただけです。
意志の力で自分を管理できる人間なんて、ほとんどいないというのが私の実感です。年齢や性格ではなく構造の問題だと思います。
対策としては、次のどれかを組み合わせてください。
- 保護者が、決まった時間に「一緒に画面を開くだけ」の時間を作る
- 週1回だけ、オンライン家庭教師や個別指導と併用する
- 教育支援センターやフリースクールなど、外の予定を1つ持つ
② 心理的な回復が、まだ済んでいない段階の子
順番があると思っています。
- 体調と生活の安定
- 心理的な回復(責められない時間の確保)
- 何かに能動的に触れている状態
- ここでようやく、勉強
3番までが整っていない段階で教材を渡すと、それは学習の機会ではなく、遅れを毎日確認させられる装置になってしまいます。そして失敗すると「やっぱり自分はだめだ」という確認が一つ増えるだけです。
この段階なら、まだ勉強を始めないほうがいいと思います(不登校になった最初の1か月)。
③ 質問できないと進めない子
映像授業は、分からないところを質問できません。
「分からない箇所が分からない」タイプのお子さんは、映像だけだと詰まったところで止まります。この場合は、人が介在する手段(オンライン家庭教師、個別指導)のほうが向いていると思います。
現実的な使い方
不登校のお子さんに渡す場合、次の順序をおすすめします。
ステップ1:まず無料体験で「開けるか」だけ見る
14日間の無料体験があります(キャンペーン適用にはクレジットカード決済が必要です)。
ここで確認するのは学力ではありません。本人が画面を開いて、1本見られるかどうかだけです。開けなければ、まだ学習の段階ではないということだと思います。
ステップ2:さかのぼって、できる学年を確認する
数学なら、分数・割合から順に確認します。詰まったところが起点です。英語なら、be動詞と一般動詞の区別、三単現、過去形の順になります。
具体的な確認ポイントは勉強の遅れを取り戻す順番に一覧でまとめました。
ステップ3:1日1本から始める
いきなり毎日1時間やらせないでください。
1日1本(15分前後)。それだけでいいので、「今日できた」という事実を作ることを優先します。不登校の子に不足しているのは学習時間ではなく、成功体験のほうです。
ステップ4:やらなかった日に、触れない
やった日に褒めるのは構いませんが、やらなかった日には何も言わないでください。褒めることと責めることはセットで作用しますので。
まとめ:最初の一歩としては、条件が良い
不登校の学習で最初に必要なのは、質の高い指導ではないと思います。「戻ることに抵抗を感じずに開ける教材」のほうです。
その条件(学年の枠がない・誰にも見られない・1本が短い・費用が安い)を満たしているという意味で、スタディサプリは最初の一歩として合理的な選択肢だと思います。
一方で、これ単体で自走できるお子さんは多くありません。強制力を外から一つ足すことを、最初から前提にしておいてください。
まずは無料体験で、本人が画面を開けるかどうかだけ確かめるところから始めるのが現実的ではないでしょうか。