朝、子どもが起きてこない。「頭が痛い」と言う。病院に行っても異常はない。それが数日続く。
この時期がいちばんつらいと思います。何が起きているのか分からず、明日どうなるのかも分からないわけですから。
この記事は、支援する側ではなく、された側の視点から書きます。私は中学3年生のときにほぼ1年間学校に行きませんでした。当時の自分が親からどう接してほしかったか、逆に何をされたら口を閉じたか。そこから整理していきます。
最初に、数字の話をひとつだけ
2025年10月に公表された文部科学省の調査(令和6年度)によると、小中学校の不登校児童生徒数は353,970人で、12年連続で増加して過去最多となりました。児童生徒1,000人あたり38.6人ですので、単純に言えば1クラスに1人以上いる計算になります。
これを書いたのは「よくあることだから安心してください」と言いたいからではありません。この状況が、ご家庭の育て方の失敗によって起きているわけではないということを、最初に確認しておきたいからです。
やってはいけないこと
① 理由を問い詰める
いちばんやってはいけないのが、これだと思います。
私がいじめについて親にも先生にも言わなかった理由は2つあります。ひとつは、相談すること自体が「恥ずかしい」「みっともない」と思っていたから。もうひとつは、親を悲しませたくなかったからです。
「いじめられているのか?」と聞かれたとしても、私は「いいえ」と返していたと思います。学校が「知らなかった」のは学校が鈍かったからではなく、私が全力で隠していたからです。
理由を言わない子は、理由がないわけではありません。言えない理由があるか、自分でも言語化できていないかのどちらかだと思います。問い詰めても出てきませんし、聞かれるたびに「話せない自分」が確認されて、余計に口が重くなります。
聞くとしても、答えを求めない形で一度だけ伝えるくらいがちょうどいいのではないでしょうか。「話したくなったら聞くよ」と言って、あとは待つ。それだけです。
② 「その程度で」と言う
私が受けていたのは、教科書を隠される、意味もなく怒鳴られる、たまに殴られる(痛くはない)、という程度のことでした。世間で報道されるいじめに比べれば、たいしたことがありません。当時の私自身がそう思っていました。
でも、毎日続くと朝起きた瞬間から憂鬱になるんですよね。
子どもは客観的な被害の大きさで不登校になるわけではありません。 傷の深さは、出来事の大きさではなく、その子の耐性と、逃げ場があるかどうかで決まります。「その程度で」という言葉は、ほぼ確実に子どもの口を閉じさせます。
③ 「明日は行けるよね」と毎晩確認する
これは善意で行われることが多いのですが、子どもにとっては毎晩の宣告になります。
「行く」と言えばプレッシャーになり、「行かない」と言えば失望させる。どちらを選んでも苦しいので、結局は黙るか、嘘をつくことになります。
ちなみに私は嘘をつくほうを選びました。「頭が痛い」「朝起きられない」という仮病です。この仮病を思いついたのも、仲の良い友達が低血圧(恐らく起立性調節障害だったと思います)でいつも昼から登校していたのを見て、「これは使える!」と悪知恵が働いたからでした。われながらひどい話です(笑)。
④ 昼夜逆転を、その場で正そうとする
昼夜逆転は、多くの場合結果であって原因ではないと思います。朝起きる理由がなくなったからリズムが崩れるわけです。
原因である「学校に行けない状態」が続いている間に生活リズムだけを強制的に直そうとすると、家の中に新しい衝突が生まれるだけになりがちです。ここは後回しでいい部分だと思っています。
⑤ 進路の話を、いま持ち出す
「このままだと高校に行けない」という話を、初期の段階でしないでください。
不登校の子は、自分の将来が閉じていく感覚をすでに持っています。私も数か月経った頃には「もう今から頑張っても高校受験には間に合わない」と諦めの境地に至っていました。そこに具体的な将来の話を重ねられると、逃げ場がなくなります。
進路の選択肢は、実際にはかなりあります(不登校からの高校進学 5つの選択肢)。ただしそれは保護者の側で先に調べておいて、本人が動ける状態になってから出すものだと思います。
やるべきこと
① 医療機関で、体の状態を確認する
これは最優先だと思います。「起きられない」「頭が痛い」の背景に、起立性調節障害などの身体的な要因があることが少なくありません。
これは怠けではなく自律神経の問題で、実際に朝は体が動きません。診断がつけば対応も変わりますし、何より本人が「自分は怠けているわけではない」と分かることに意味があると思います。
まずはかかりつけの小児科・内科にご相談ください。
② 学校に「欠席連絡のルール」を作ってもらう
毎朝、本人が理由を説明して欠席の連絡をするのは、かなりの負荷です。
担任と相談して、「しばらくは連絡がない日は欠席とみなす」「連絡は保護者から週1回まとめて」といった形にしてもらってください。多くの学校は応じてくれると思います。
同時に、担任からの毎日の電話や家庭訪問についても頻度を調整してもらうことをおすすめします。善意の連絡が、本人にとっては「まだ許されていない」という通知になることがあるからです。
③ 相談先を、保護者ご自身のために確保する
お子さんのためではなく、保護者ご自身のために必要だと思っています。
- スクールカウンセラー(学校に配置されています。担任経由で予約できます)
- 教育支援センター(適応指導教室):自治体が設置。無料で、在籍校の出席扱いになる場合があります
- 児童相談所/子ども家庭支援センター
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(子ども本人・保護者どちらも利用できます)
私の両親は、不登校の初期に心理学の本を読んだりしていたようです。そして途中から、不登校について何も言わなくなりました。当時の私はそれを「放っておいてくれて助かる」と思っていましたが、いま自分が二児の父になって考えると、あの沈黙は相当な我慢だったはずです。
親が一人でその我慢を抱えると、どこかで限界が来ると思います。相談先は、お子さんより先に親御さんが確保してください。
④ 家の中に、責められない時間を作る
私が不登校の1年間にやっていたのは、ゲーム、漫画、映画です。それだけです。
ただ、ゲームも漫画も1日中やっていれば1か月もしないうちに飽きます。あまりに暇だったので、PCで絵を描いたり、ゲームを買うお金欲しさにHPを作って今でいうアフィリエイトを始めてみたりもしていました。当時は完全な暇つぶしのつもりでしたが、結果的にこれがその後の人生でいちばん役に立っています。
不登校の期間が「空白」になるかどうかは、勉強していたかどうかでは決まらないと思います。何かに触れていたかどうかで決まります。
ですのでゲームを取り上げるのは、私はあまりおすすめしません。それが唯一、いま本人が能動的に触れているものである可能性があります。
⑤ 勉強については、優先順位を大幅に下げる
学校と同じペースで全教科を進めるのは、この時期には無理だと思います。やろうとして失敗すると、「やっぱり自分はだめだ」という確認が一つ増えるだけです。
本当に必要なのは、算数・数学と、まとまった文章を読む力の2つだけだと思っています。この2つが残っていれば、必要になったときに他は取り返せます。詳しくは不登校の間にやるべき勉強は2つだけに書きました。
「いつ戻れるのか」への答え
これは正直に書きます。分かりません。
私の場合、中学3年の4月に行かなくなって、卒業まで戻りませんでした。1年間、丸ごとです。
そして高校に入って1〜2か月で、普通に通えるようになりました。カウンセリングでも、本人の努力でもなく、環境が変わったからです。 同級生のほぼ全員が不登校経験者で、中学時代の話をしないという暗黙のルールがある学校でした。誰も私の過去を知らず、誰も聞かなかった。それだけで通えるようになりました。
ですので私は、「いまの学校に戻すこと」を唯一のゴールにしないほうがいいと思っています。同じ場所に戻すために1年を使うより、次の環境に移るまでの時間として使ったほうが、結果的に本人が早く動き出すことがあります。
もちろん戻れるならそれがいちばんです。ただ、戻れなくても終わりではない、ということです。
最初の1か月にやること、まとめ
- 医療機関で体の状態を確認する(起立性調節障害などの可能性)
- 学校と、欠席連絡と家庭訪問の頻度を調整する
- 保護者ご自身の相談先を確保する(スクールカウンセラー、教育支援センター)
- 理由を問い詰めない。「話したくなったら聞く」と一度だけ伝える
- 家の中に、責められない時間を作る
- 勉強と進路の話は、いったん保留にする
進路については、本人が動ける状態になってから出せば間に合います。保護者の側で先に選択肢を把握しておくことが、そのときの余裕になると思います。