不登校の期間が長くなると、「もう追いつけないのではないか」と思えてきますよね。
先に事実を書いておきます。私は中学3年をまるごと欠席し、通信簿はオール1、年間の出席日数は10日以下でした。高2の冬に大学受験を決めたとき、模試は全科目偏差値30台、数学は0点です。そこから3年かけて難関私立大学の理系学部に合格しています。
追いつけます。ただし、順番を間違えると追いつけません。この記事では、その順番を書きます。
大原則:量ではなく、順番で決まります
遅れを取り戻す作業で失敗する理由は、ほぼ一つだと思っています。
学年通りの内容から始めようとすること。
不登校で抜けているのは「今の学年」ではなく、「どこか過去の学年」です。土台が抜けたまま今の内容を積んでも崩れますし、崩れると「やっぱり自分には無理だ」という結論だけが残ってしまいます。
ステップ1:どこから分からないかを特定する(最重要)
いちばん重要で、いちばん飛ばされる作業です。
やり方は単純で、確実にできる学年まで、さかのぼって確認するだけです。
数学の確認ポイント
上から順に確認して、詰まったところが起点になります。
| 確認する内容 | 標準学年 |
|---|---|
| 分数のかけ算・わり算 | 小5〜6 |
| 割合・速さ | 小5〜6 |
| 正負の数・文字式 | 中1 |
| 一次方程式 | 中1 |
| 連立方程式・一次関数 | 中2 |
| 因数分解・平方根 | 中3 |
| 二次関数 | 中3 |
英語の確認ポイント
| 確認する内容 | 標準学年 |
|---|---|
| アルファベットと基本の単語 | 小学校 |
| be動詞と一般動詞の区別 | 中1 |
| 三単現のs・過去形 | 中1〜2 |
| 不定詞・動名詞 | 中2 |
| 関係代名詞 | 中3 |
私の場合、高校2年生の時点で「二次関数が分からない」でした。つまり中学3年の内容です。中学3年の教科書ガイドを買い直して、弟に教わりました。高2が中学生の弟に数学を教わるのは、率直に言ってプライドが折れます(笑)。
でも、ここを飛ばして高校範囲から始めていたら、絶対に間に合っていません。さかのぼるのは遠回りではなく、最短距離だと思います。
ちなみに私は、通信制高校の入試でアルファベットを書く問題が出たときに「LMNの順番ってどうだっけ……」と本気で悩み、たぶんNMLと書いています。順番を間違えて覚えていたことに気づいたのは、ずっと先になってからでした。そのくらいの地点からでも間に合いますので、ご安心ください。
ステップ2:さかのぼることの心理的負担を、下げる
特定できても、実行できないことがあります。理由は心理面です。
中学2年生に小学5年生の問題集を渡すのは、本人にとってかなりきついことだと思います。塾に行けば周りに同学年の子がいますし、家庭教師ならその人には見られます。表紙に「小学5年生」と書かれた問題集が家にあること自体が、負担になります。
対策は3つあると思います。
- 学年表記のない教材を選ぶ(単元名だけで構成されているもの)
- 学年をまたげるオンライン教材を使う(どこを見ているか誰にも分からない)
- 「戻る」ではなく「確認する」という言い方に変える
不登校の子の学習において、「見られない」という条件は、教材の質と同じくらい重要だと思っています。どれだけ良い教材でも、開くのが恥ずかしければ開かれませんので。
ステップ3:1日5分から、成功体験を積む
いきなり1時間やらせないでください。
映像授業を1本。問題を3問。それだけでいいので、「今日できた」という事実を作ることを優先します。
不登校の子に不足しているのは学習時間ではなく、成功体験のほうです。ここが埋まらないうちに量を増やそうとすると、必ず折れます。
順番としてはこんなイメージです。
- 5分できる状態を作る(2〜4週間)
- 20分できる状態にする(1〜2か月)
- 1時間できる状態にする(ここまで来れば自走します)
ステップ4:外側に、強制力を用意する
ここが、私がいちばん強く言いたい部分です。
私は大学受験の浪人2年目に自宅浪人をしました。結果は完全な失敗です。生活リズムが崩れ、昼夜逆転し、1年を丸ごと失いました。
18歳で、大学に行きたいという明確な意思を持った状態でさえ、自宅では自分を管理できなかったわけです。
3年目に予備校に通って合格しました。やったことは単純で、「いつ、どこで、何をやるか」を自分で決めるのをやめて、外側のルールに従っただけです。
つまり、意志の力で自分を管理できる人間なんて、ほとんどいないと思っています。本人の性格や年齢の問題ではなく、環境に強制力があるかどうかという構造の問題です。
家で勉強が進まないのは、やる気の問題ではありません。だとすれば、対処すべきは気持ちではなく仕組みのほうになります。
強制力の作り方(負荷の軽い順)
| 方法 | 外出 | 費用の目安 | 強制力 |
|---|---|---|---|
| 進捗が記録に残るオンライン教材 | 不要 | 月2,000〜3,000円 | 弱〜中 |
| オンライン家庭教師・個別指導 | 不要 | 月1〜3万円 | 中 |
| 教育支援センター・フリースクール | 必要 | 無料〜数万円 | 中 |
| 個別指導塾 | 必要 | 月2〜4万円 | 中〜強 |
| 予備校・進学塾 | 必要 | 月3〜6万円 | 強 |
外に出られない段階なら、上から順に試してみてください。「決まった時間に、誰かと会う(画面越しでも可)」という予定が1つあるだけで、1週間の形が変わります。
なお、不登校や中退からの受験に特化した個別指導もあります。一般的な進学塾とは前提が違い、勉強そのものより先に「通えるかどうか」から相談できるのが強みです。この記事の最後で1つ挙げていますが、その前に書いておかなければならないことがあります。
先に、利害関係を書いておきます。記事の最後で挙げているキズキ共育塾は、私が大学3年だった2014年ごろに講師として働いていた場所です。当時はまだNPOで、株式会社になったのは私が辞めたあとだったと記憶しています。
ただ、担当した生徒は1名だけです。就職活動と卒業研究が重なっていた時期だったためで、「中を知り尽くしている」とは、とても言えません。しかも10年以上前の話ですので、いまの運営がどうなっているかは分かりません。
そのうえで挙げているのは、不登校に特化した完全1対1という形が、ここで書いた「外側の強制力」にそのまま当てはまるからです。当サイトはリンク経由の申込により紹介料を受け取りますので、その点も含めてご判断ください。
私が実際にやったこと(高2冬〜浪人3年目)
参考までに、そのまま書きます。
高2の冬〜高3
- 英語の家庭教師:週1回
- 個別指導塾:週2コマ
- 通学の電車で英単語
- 修学旅行にも参考書を持参
中身は特別ではありません。重要だったのは、学校の外に強制力のある学習の場を持ったことです。通信制高校の授業だけを受けていたら、この学力にはなっていません(理由は通信制高校から大学進学はできるかに書きました)。
結果、1年目に偏差値55前後の私大に合格。ただし納得できず浪人しました。
浪人1年目:失敗
自宅浪人。昼夜逆転。1年をまるごと失いました。
浪人2年目:合格
予備校に通学。文系に転向していたのを理系に戻し、難関私立大学の理系学部に合格しました。
高校受験を控えている場合の、現実的な作戦
中3で不登校の場合、時間がありません。優先順位はこうなると思います。
- 数学と英語に集中する。 積み上げ式で、後から戻るコストが最も高い教科です
- 理科・社会は、暗記で点が取れる単元だけ拾う
- 内申が低い前提で、受験できる学校を先に調べる
3番が特に重要です。内申が低くても受けられる高校は存在します。
- 自治体の不登校生徒対象の特別選抜(名称は自治体により異なります)
- チャレンジスクール・エンカレッジスクールなど、学力検査中心の学校
- 定時制高校(学力検査と面接が中心のことが多いです)
- 通信制高校(私の入試では足し算が出ました)
選択肢の全体像は不登校からの高校進学 5つの選択肢にまとめています。
「間に合わないから諦める」は、この段階では早すぎると思います。高校に入ってから3年かけて取り返す道があります。実際、私は高2の冬から始めて間に合いました。中3の秋に学力が足りないことは、進路の終わりを意味しません。
続かないときの、原因の切り分け
うまくいかないとき、原因はだいたい次の4つのどれかだと思います。
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 開いても分からない | さかのぼりが足りない | もう1〜2学年戻る |
| 分かるけど続かない | 強制力がない | 外部の仕組みを1つ足す |
| やる気が出ない | 量の設定が高すぎる | 1日5分に落とす |
| 始める前に消耗する | 心理的な回復が先 | いったん学習を止める |
いちばん多いのは1番目と2番目です。そして4番目のときは、勉強を止めることが正解だと思います。順番を守らないと、何をやっても定着しません。
最後に
不登校の1年は、人生の1年でしかありません。
私は2年遅れて社会に出ましたが、社会に出てしまえば誰も気にしませんでした。就職の面接で浪人について突っ込まれたのは一度だけです。
必要になったとき、人は勉強します。いま守るべきなのは進度ではなく、戻れる土台と、戻る気力のほうだと思います。