結論から書きます。通信制高校から難関大学に進学することは可能です。 私自身が、内申オール1・年間出席10日以下という状態から通信制高校に入り、その後に難関私立大学の理系学部に進んでいます。
ただし、そこには条件があります。そしてその条件は、学校のパンフレットには書かれていません。
前提:通信制高校の授業だけでは、大学受験の学力は届きません
これは学校批判ではなく、設計の話です。
通信制高校の授業は、クラス内でいちばん遅れている生徒に合わせて進みます。生徒の学力の幅が異常に広いからです。小学校から不登校をしている人もいれば、難関私立中学をドロップアウトしてきて高校範囲を先取りしている人もいます。私の感覚では、学力の中央値は中学1年生ぐらいでした。
そこで全日制と同じ速度で進めれば、大半が脱落します。だから「挫折させないこと」に最適化されているわけで、この設計自体は正しいと思っています。
ただ、その結果として、卒業要件を満たすことと、大学受験に必要な学力を身につけることは、まったく別のプロセスになります。
「大学進学率◯%」という数字を見るときは、必ず分母と内訳を確認してください。多くの場合、その数字には専門学校が含まれていたり、指定校推薦や総合型選抜での進学が大半を占めていたりします。一般選抜で難関大に入った人数は、たいてい公表されていません。資料請求で募集要項を取り寄せて、進学先の一覧を見るのが確実だと思います。
実際にやったこと:私の3年半
きれいな成功譚ではありませんので、失敗した年も含めて書きます。
高2の冬:ゼロ地点の確認から始まりました
先輩たちの進路が決まっていくのを見て、初めて自分の進路を考えました。書店で分厚い大学受験案内を買い、偏差値50くらいの大学を目標に設定しました。
そして参考書を開いて、数学IAが一行も分からないことに気づきます。
中学3年の教科書ガイドを買い直しました。 二次関数の意味が分からず、弟に教わっています。高校2年生が中学生の弟に数学を教わるのは、率直に言ってプライドが折れます(笑)。でも、そこを折らないと何も始まりませんでした。
初めて受けた模試は、全科目偏差値30台、数学は0点です。
ここが最初にして最大の分岐点だと思います。通信制から進学を目指す場合、まず「どこまで戻る必要があるか」を正確に把握する作業が要ります。高校の内容から始めようとして挫折する子を、支援の現場で何人も見ました。小学校の分数まで戻る必要があるなら、戻ったほうが速いです。
高3:学校の外に学習の仕組みを作りました
やったことは特別ではありません。
- 英語の家庭教師を週1回
- 個別指導塾を週2コマ
- 通学の電車で英単語
- 修学旅行にも参考書を持参
重要なのは中身より、「学校の外に、強制力のある学習の場を持った」ことだと思います。通信制高校の授業だけを受けていたら、この学力にはなっていません。
浪人1年目:自宅浪人で、丸ごと1年を失いました
1年目の受験では偏差値55前後の私立大に合格したのですが、納得できず浪人を選びました。そして「宅浪でいける」と考えたのが、完全な間違いでした。
生活リズムが崩れ、昼夜逆転し、誰も見ていないので勉強しなくても誰にも怒られない。この1年は、ほぼ丸ごと無駄になりました。
この失敗の意味を、いまはこう理解しています。不登校の子が生活リズムを崩すのは、意志が弱いからではなく、環境に強制力がないからです。私は18歳で、進学したいという明確な意思を持った状態でさえ、自宅では自分を管理できませんでした。「本人のやる気の問題」ではないんですよね。
浪人2年目:予備校に通って、受かりました
3年目は駿台に通いました。やったことは単純で、「いつ、どこで、何をやるか」を自分で決めるのをやめて、外側のルールに従っただけです。
文系に転向していたのを理系に戻し、難関私立大学の理系学部に合格しました。
通信制から進学するために必要な、3つの条件
私の経験と、その後に関わった不登校の子どもたちの学習支援から、条件は次の3つに整理できると思います。
条件1:学校の外に、強制力のある学習環境を持つこと
塾、予備校、家庭教師、オンライン教材、どれでも構いません。重要なのは「自分で決めなくていい仕組み」があることです。
通信制高校の中には、進学コースや提携予備校を持つ学校もあります。ただしその質は学校ごとに大きく違いますので、「進学コースがある」ことと「進学に必要な学力が身につく」ことは別だと考えて確認していただくのが良いと思います。
条件2:さかのぼることに、抵抗を持たないこと
不登校の期間があるなら、学年通りの内容から始めても意味がありません。
中学生が小学校の分数に戻る、高校生が中学英語に戻る。これは遠回りではなく最短距離だと思います。ここでプライドが邪魔をすると、いつまでも土台のないまま積み上げることになります。
学年をさかのぼって学び直せる教材については、勉強の遅れを取り戻す順番で具体的に書きました。
条件3:時間の余裕を、最初から見込んでおくこと
私は結果的に2年遅れて大学に入りました。
これを失敗だと言う人もいると思いますが、社会に出てしまえば誰も気にしません。就職活動で2浪について面接で突っ込まれたのは、一度だけでした。
※補足:とはいえ業界差はあると思います。銀行や信用金庫は年齢に厳しめ、IT・生損保・自動車部品・ゲームなどは比較的寛容という肌感でした。
3年で受かることを前提に計画すると、1年目で失敗したときに折れます。 最初から「時間はかかるかもしれない」と家族で共有しておくほうが、結果的に本人は動きやすくなると思います。
進学を視野に入れるなら、学校選びで見るべき5点
通信制高校を選ぶ段階で、進学の可能性が大きく変わります。資料請求のときは次を確認してください。
- 進学実績の内訳 ── 大学・短大・専門学校の内訳、指定校推薦と一般選抜の割合
- 指定校推薦の枠 ── どの大学に、何枠あるか。通信制でも枠を持つ学校はあります
- 進学コースの中身 ── 授業なのか自習監督なのか。担当は予備校講師なのか校内教員なのか
- 通学コースの時間割 ── 週5日通っても、午後が自習だけという学校があります
- 併用できる外部の学習環境 ── 通学時間が長いと、塾との両立が物理的に難しくなります
指定校推薦は、通信制からの進学で現実的に強い手段だと思います。通信制高校でも大学の指定校枠を持っている学校があり、日々のレポートと定期テストを堅実にこなせば評定平均が取れます。不登校を経験した子にとって、「毎日の積み重ねが評価される」形式は、一発勝負の一般入試より相性が良い場合があります。ただし枠は学校ごとに違いますので、入学前に必ず確認すべき項目です。
最後に:可能ですが、自動的ではありません
通信制高校から難関大に行くことは可能です。実例として私がいます。
ただし、それは通信制高校が進学させてくれたからではありません。通信制高校が「通い続けられる場所」を提供してくれて、その上で学校の外に学習の仕組みを作ったからです。
この2つを混同したまま3年間を過ごすと、高3の秋に選択肢がないことに気づきます。逆に、最初からこの構造を理解して学校を選べば、通信制は進学にとって不利な選択ではないと思います。
学校選びの段階で進学実績の内訳と進学コースの中身を確認することが、3年後の選択肢を決めます。