通信制高校は学費が高い。これは事実です。私立の通学コースなら、年間60〜100万円を超えることもあります。
ただ、支援制度を使い切ったあとの実質負担は、多くのご家庭が思っているよりかなり下がると思います。そして2026年度から、国の支援は制度開始以来いちばん大きく変わりました。
この記事では、使える制度を「申請する順番」に並べていきます。学費の金額そのものについては通信制高校の学費は実際いくらかにまとめてあります。
最初に、いちばん大事なことを書きます。国の支援金も給付金も、申請しないと1円も出ません。そして遡っての支給はありません。入学時に学校から案内が来ますので、期限内に必ず出してください。「そのうちやろう」で1年分を失うご家庭が、実際にあります。
全体像:4段階で考える
支援は性質の違う4種類に分かれます。上から順に確認していただくのが良いと思います。
| 段階 | 制度 | 性質 | 使いみち |
|---|---|---|---|
| ① | 高等学校等就学支援金 | 給付(返済不要) | 授業料のみ |
| ② | 高校生等奨学給付金 | 給付(返済不要) | 教科書・教材・通学費など授業料以外 |
| ③ | 自治体独自の授業料軽減 | 給付(返済不要) | 授業料の上乗せ |
| ④ | 各種の貸付・教育ローン | 借入(返済あり) | 入学金など、①〜③で足りない分 |
①〜③は返す必要のないお金です。ここを取りこぼさないことが先で、④はそのあとの話になります。
① 高等学校等就学支援金:2026年度から所得制限が撤廃
国が授業料を肩代わりする制度です。お金は家庭ではなく学校に振り込まれ、その分だけ請求額が減ります。
2026年度の変更点
所得制限が完全に撤廃されました。 これまでは世帯年収910万円未満などの条件がありましたが、2026年度からは世帯収入にかかわらず対象になります。
支給額の上限(年額)
| 学校の種類 | 上限 |
|---|---|
| 公立(全日制・定時制) | 118,800円 |
| 私立(全日制) | 457,200円 |
| 私立通信制(定額制の学校) | 337,200円 |
| 私立通信制(単位制の学校) | 1単位あたり 13,668円 |
通信制でつまずきやすいのが、この「単位あたり」の計算です。通信制高校の多くは単位制で、授業料も履修単位数に応じて決まります。支援金も同じ考え方で、履修した単位数に単価をかけた額が支給されます。
ただし単価と定額・単位制の区分は学校によって違うので、志望校に「就学支援金を適用したあとの、年間の実質負担額はいくらになりますか」と直接聞くのが確実です。学校側は毎年計算しているので、すぐ答えが返ってきます。
見落としやすい3つの上限
ここを知らずに履修計画を立てると、あとで自己負担が発生します。
- 年間30単位まで。 31単位目からは支援の対象外で、その分の授業料は全額自己負担です
- 通算74単位まで。 卒業要件と同じ数なので、留年や科目の取り直しをすると足が出ます
- 支給期間は最大48か月。 3年で卒業する前提なら余裕がありますが、4年以上かかると最後は対象外になります
ここは実務的にかなり効くところだと思います。「たくさん履修したほうが安心」と考えて年35単位を登録すると、5単位分(数万円)が丸ごと自己負担になってしまいます。年30単位以内に収めて3年で74単位という組み方が、支援を最大限使える形です。履修登録の前に、担任と単位数を確認してください。
対象になるのは授業料だけ
入学金・施設設備費・教材費・行事費は対象外です。ここが次の②で効いてきます。
② 高校生等奨学給付金:返済不要で、授業料以外に使える
こちらは家庭に直接支給される給付金です。返済は不要で、教科書代・教材費・学用品・通学費・PTA会費などに使えます。
2026年度から、対象が大きく広がりました
これまでは住民税非課税世帯などに限られていましたが、2026年度から年収約490万円までの世帯に拡大されました。「うちは非課税ではないから関係ない」と思い込んでいるご家庭が、いちばん取りこぼしやすい制度だと思います。
支給額の目安(年額・通信制の場合)
| 世帯の区分 | 公立の通信制 | 私立の通信制 |
|---|---|---|
| 生活保護(生業扶助)受給世帯 | 32,300円 | 52,100円程度 |
| 住民税所得割非課税世帯 | 50,500円 | 52,100円程度 |
| 年収270〜380万円未満程度 | 16,830円 | 非課税世帯額の約1/3 |
| 年収380〜490万円未満程度 | 12,630円 | 非課税世帯額の約1/4 |
金額は国の基準をもとに各都道府県が実施しているため、お住まいの都道府県によって細かい差があります。上の表は目安として使い、正確な額は「◯◯県 高校生等奨学給付金」で検索して、都道府県の公式ページで確認してください。
申請の時期に注意
多くの自治体で、申請期間は7月〜11月ごろに設定されています。入学直後ではなく、少し経ってからなんですよね。学校経由で案内が来ることが多いのですが、通信制で登校日数が少ないと受け取り損ねることがあります。夏になったら、こちらから学校に確認してみてください。
なお、保護者の失業や離婚などで家計が急変した場合は、年度途中でも申請できる枠があります(申請期限は年明けまで設定されていることが多いです)。年度の初めに条件を満たしていなくても、諦めないでください。
③ 自治体独自の授業料軽減:ここで差が大きく開きます
国の制度に上乗せして、都道府県が独自の助成を出しています。これが自治体によって本当に大きく違います。
たとえば東京都は、私立高校の授業料軽減助成金について2024年度から所得制限を撤廃しており、都内在住であれば収入にかかわらず申請できます。都認可の通信制も対象です。
一方で、上乗せがほとんどない県もあります。「通信制高校 学費 無償化」といった一般論の記事ではここが抜け落ちてしまいますので、必ずご自身の自治体で確認してください。
確認のしかた
検索窓に次のように入れてください。
◯◯県 私立高等学校 授業料軽減助成金
◯◯県 私立高校 学費 支援
多くは都道府県の私学振興財団や私学振興課が窓口です。学校を通さず、家庭が直接申請する制度が多いので、学校からの案内を待っていると間に合わないことがあります。
④ それでも足りないとき:無利子の貸付という手がある
①〜③を使ってもなお不足する場合、特に入学時にまとまって必要になる入学金や制服代については、借りるという選択肢があります。金利の低いものから順に検討してください。
生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)
各地の社会福祉協議会が窓口の、低所得世帯向けの貸付制度です。無利子という点で、他のどの手段よりも有利です。
| 種類 | 内容 | 上限 |
|---|---|---|
| 教育支援費 | 在学中の授業料など | 高校は月35,000円以内 |
| 就学支度費 | 入学時に必要な費用 | 50万円以内(入学時1回) |
- 無利子(返済計画どおりに返した場合)
- 据置期間は卒業後おおむね6か月。在学中の返済は不要です
- 償還期間は20年以内
この制度は、率直に言ってあまり知られていないと思います。金融機関ではなく社会福祉協議会が窓口であること、そして「福祉」という名称から自分は対象外だと思い込んでしまうことが理由ではないでしょうか。
ただし、すでに滞納している学費への貸付はできません。苦しくなってからではなく、苦しくなる前に相談してください。市区町村の社会福祉協議会に電話すれば、対象になるかどうかその場で教えてもらえます。
母子父子寡婦福祉資金貸付金
ひとり親家庭が対象で、修学資金・就学支度資金などがあります。無利子(連帯保証人がいる場合)で、窓口は自治体の福祉担当課です。
国の教育ローン(日本政策金融公庫)
- 貸付限度額は子ども1人あたり350万円以内
- 固定金利
- 高校の入学金や授業料にも使えます
上記の制度が使えない世帯にとっての現実的な選択肢です。民間の教育ローンより金利が低いのが通常なので、比較する場合はまずここを起点にしてください。
学校独自の減免・分納
見落とされがちですが、学校に直接相談するという手もあります。
- 成績・出願時期による特待生制度(授業料の一部または全額免除)
- 兄弟姉妹の同時在籍による減免
- 分割払い・納入時期の相談
私立の通信制高校は生徒募集に力を入れていますので、この手の制度を持っている学校は珍しくないと思います。ただし募集要項の目立つ場所には書かれていないことが多いので、資料請求で取り寄せた冊子の細かい部分を読むか、直接聞いてみてください。
制度の前に:そもそも学費を下げる3つの方法
支援制度を調べる前に、選び方そのもので負担が変わります。
1. 公立の通信制・定時制を候補から外していないか
公立の通信制なら年間数万円、公立の定時制も年間数万円で済みます。支援制度を駆使した私立より、公立のほうが圧倒的に安いのは動かせない事実です。
学校数が少なく、サポートも手厚くはありませんが、費用を最優先するなら必ず候補に入れてください。情報が届いていないだけで検討されていないケースが、本当に多いと思います(不登校からの高校進学 5つの選択肢)。
2. 通学日数を必要以上に増やさない
同じ学校でも、週5日通学コースと在宅中心コースでは学費が倍以上変わります。通学日数が増えるほど教員の人件費と施設利用が増えるためです。
「毎日通ったほうが立ち直る」とは限りません。お子さんの状態に対して過剰なコースを選ぶと、費用だけが上がってしまいます。
3. サポート校が本当に必要か検討する
サポート校を併用すると学費は二重にかかり、年間で60〜130万円規模になります。しかもサポート校の費用は就学支援金の対象外です。
レポートを自分で提出できるお子さんなら不要だと思います。判断の基準は通信制高校とサポート校の違いに書きました。
申請の年間カレンダー
| 時期 | やること |
|---|---|
| 入学手続き時 | 学校から就学支援金の案内。マイナンバー関係書類を提出 |
| 4〜6月 | 自治体独自の授業料軽減助成の受付開始(自治体差あり)。家庭が直接申請することが多い |
| 7〜11月 | 高校生等奨学給付金の申請期間 |
| 随時 | 生活福祉資金・母子父子寡婦福祉資金・教育ローンの相談 |
| 年度途中 | 家計急変時の申請枠。失業・離婚などがあれば学校と自治体へ相談 |
最後に
費用の話を、お子さんの前でしすぎないほうがいい、というのが支援に関わって感じたことです。
不登校の子は、自分が家族に負担をかけているという意識をすでに強く持っています。そこに具体的な金額の話が重なると、「自分のせいで」という方向に働いて、進路そのものを諦める理由になってしまうことがあります。
比較検討は保護者の側で進めて、本人には「行ける選択肢」として提示する。この順番のほうが、結果的に本人は動きやすくなると思います。
※補足:制度は年度ごとに変わります。この記事の数字は2026年度時点のもので、金額や条件は自治体・学校によって差があります。最終的な判断の前に、必ず志望校とお住まいの自治体の公式情報をご確認ください。
そのうえで、実際の負担額を知る最短の方法は、候補の学校に「支援金適用後の年間実質負担額」を試算してもらうことです。資料請求で複数校の募集要項を取り寄せ、同じ質問を各校にぶつけると、金額の差がはっきり見えます。